最高裁判所第一小法廷 昭和49年(あ)2469号 決定
主文
本件各上告を棄却する。
理由
弁護人浅野憲一、同大西幸男連名の上告趣意第一章第一点について
所論は、違憲(憲法三一条、三七条違反)をいうが、第一審における被告人らの統一公判要求は、いわゆる昭和四四年一〇月一一月闘争と称されるところの多数の事件と本件との併合審理を求めるもので、これら多数の事件と本件被告事件とは法律上共犯関係にも立たないものであるから、第一審がその要求をいれなかったことは正当であり、刑訴法三一三条所定の裁量権を不当に行使したとはいえないとした原審の判断は正当として是認できる。それゆえ、所論は前提を欠き、適法な上告理由にあたらない。
同第二点について
所論は、違憲(憲法三一条、三七条違反)をいうが、被告人らに対する退廷命令は、被告人らが裁判長の訴訟指揮に従わず、法廷の秩序を乱したためやむなく採られた措置であり、被告人らは自己の行為によって反対尋問権等を喪失したとみられるだけでなく、被告人らの退廷後も弁護人が証拠調に終始立ち会っており反対尋問の機会も与えられていたから、第一審の証拠調手続になんらの違法はないとした原審の判断、及び刑訴法三四一条が同条所定の事由があるときは被告人の陳述を聴かないで判決をすることができると定めた趣旨は被告人の正当な防御権の放棄を理由とするものであり、この理は判決の前提となる審理を行う場合においてもなんら異なるところはないから、いったん公判期日に出頭した被告人が裁判長から法廷の秩序維持のため退廷を命ぜられたときは、裁判所は同条に基き、被告人不在のまま当日の公判審理を行うことができるものと解すべきであるとした原審の判断は、いずれも正当である。それゆえ、所論は前提を欠き、適法な上告理由にあたらない。
同第三点について
所論は違憲(憲法三七条二項違反)をいうが、実質は原審の裁量に属する証拠の採否に関する単なる法令違反の主張にすぎず、適法な上告理由にあたらない。
同上告趣意第二章のうち、判例違反をいう点について
所論は判例違反をいうが、所論引用の各判例は、いずれも事案を異にし本件に適切でなく、適法な上告理由にあたらない。
同上告趣意第二章のうち、黙秘権不告知の違憲性についてと題する部分について
所論は違憲(憲法三八条一項、三一条違反)をいう点もあるが、実質はすべて単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由にあたらない。
同上告趣意第二章のうち、公判期日延期申請の不当な却下の違憲性についてと題する部分について
所論は違憲(憲法三七条一項、三一条違反、上告趣意に憲法三八条一項とあるのは三七条一項の誤記と認める)。をいう点もあるが、実質はすべて単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由にあたらない。
同上告趣意第二章のうち、忌避申立を簡易却下したことの違憲性についてと題する部分について
所論は違憲(憲法三一条、三七条違反)をいう点もあるが、実質はすべて単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由にあたらない。
同上告趣意第二章のうち裁判非公開の違憲性についてと題する部分について
所論は違憲(憲法三一条、三七条違反)をいうが、原判示に沿わない事実を前提として違憲をいうもので、適法な上告理由にあたらない。
同上告趣意第三章、第四章について
所論は、事実誤認、量刑不当の主張であって、適法な上告理由にあたらない。
よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 岸上康夫 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一 裁判官 団藤重光)